ナノ物質の強度を決める表面1層の柔らかさ―電子顕微鏡観察下での金属ナノ接点のヤング率測定―(2022.04.05)

ナノ物質の強度を決める表面1層の柔らかさ
―電子顕微鏡観察下での金属ナノ接点のヤング率測定―

 金沢大学理工研究域数物科学系 新井豊子教授と北陸先端科学技術大学院大学 ナノマテリアル・デバイス研究領域らの共同研究グループは、[111]方位を軸とした金ナノ接点を引っ張る過程を透過型電子顕微鏡で観察しながら、等価ばね定数と電気伝導の同時に測定する手法(顕微メカニクス計測法)によって、金ナノ接点のヤング率がサイズに依存することを明らかにした。

       

 金[111]ナノ接点は砂時計のようなくびれ形状を持つ。そのくびれは、0.24nm引っ張るたびに、より小さな断面積をもつ(111)原子層1層が挿入されることで段階的に細くなっていく。この観察事実を基に、挿入前後の等価ばね定数値の差分から、挿入された(111)原子層の等価ばね定数を求め、さらにこの(111)原子層の形状とサイズを考慮してヤング率を算出した。サイズが2 nm以下になると、ヤング率は約80 GPaから30 GPaへと徐々に減少した。この結果から、最外層のヤング率が約22 GPaと、バルク値(90GPa)の約1/4であることを見出した。このような材料表面での機械的強度の差は、ナノ電気機械システム(NEMS)の材料設計において考慮すべき重要な特性である。

 

 本研究成果は、2022年4月5日(米国東部標準時間)に科学雑誌『Physical Review Letters』に掲載されました。

       

 なお、本研究は、日本学術振興会(JSPS)科研費、18H01825、 18H03879、笹川科学研究助成、丸文財団交流研究助成を受けて行われました。

 

図1:
(上段)金ナノコンタクトの等価ばね定数を計測する顕微メカニクス計測法。透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて金ナノ接点の構造観察をしながら、長辺振動水晶振動子(LER))を用いて等価ばね定数を計測できる。
(下段)(左)金ナノ接点の引っ張り過程における変位に対する電気伝導及び等価ばね定数の変化を示すグラフ。(右)変位Aと変位Bで得た金ナノ接点のTEM像と最もくびれた断面の構造モデルを示す。黄色が内部にある原子、青が最表面原子である。

図2:金[111]ナノ接点の引っ張り過程を28回測定して、統計的に求めた金[111]ナノ接点ヤング率のサイズ依存性である。横軸は、断面積である。赤丸が実験値であり、誤差は、同じ断面の金(111)原子層に対して得られたヤング率のばらつきを示す。青丸は、第一原理計算によって得た結果である。

 

【用語解説】

 長辺振動水晶振動子(LER)
 長辺振動水晶振動子(LER、図1参照)は、細長い振動子(長さ約3 mm、幅約0.1 mm)を長辺方向に伸縮振動させることで、周波数変調法の原理で金属ナノ接点などの等価バネ定数(変位に対する力の傾き)を検出できる。特徴は、高い剛性(1×105 N/m)と高い共振周波数(1×106 Hz)である。特に、前者は、化学結合の剛性(等価バネ定数)測定に適しているだけでなく、小さい振幅による検出を可能とすることから、金属ナノ接点を壊すことなく弾性的な性質を得ることができ、さらには、原子分解能TEM像も同時に得られる点で大きな利点をもつ。

 

詳しくはこちら(PDF)

・ Physical Review Letters

・ 研究者情報:新井 豊子