イベント

2022年度理学談話会(計算科学分野)(2023.03.02)

終了
開催期間
2023/3/2
2023年02月02日

講 師:磯部 雅晴先生(名古屋工大・工学研究科)

日 時:令和5年3月2日(木) 16時より

場 所:金沢大学自然科学5号館 大講義室

題 目:剛体球系の相転移-アルダー転移と分子シミュレーションの発展-

要 旨:分子シミュレーションの創始者の一人Berni J. Alder氏は,1950 年代にWainwright氏と共同で剛体球系の分子動力学法(Event-Driven Molecular Dynamics: EDMD)の開発に成功した.この新しい方法論を用い理論では決してわからなかった「剛体球系の相転移」(いわゆる「アルダー転移」)の存在を示した.この業績は,その後の電子計算機を使った統計物理学や分子シミュレーション研究の発展の大きな原動力となったことはよく知られている[1-3].剛体球系では2009年にWerner Krauth氏(ENS-Paris)らによる棄却のないEvent-Chainモンテカルロ法(ECMC)が開発され,2次元融解問題や3次元剛体球系の結晶化を始め様々な系に拡張され,「平衡緩和」の計算効率において著しい優位性が示され大きな注目を集めている[4].また,近年Michael Engel氏(FAU, Germany)らはECMCにEDMDの衝突則を導入した新しい方法論Newtonian Event-Chain (NEC) MC法を提案し「融解過程」における平衡緩和の優位性を示した[5].本講演では,剛体球系の相転移を自由体積の観点から再訪し,その後の発展や最新の方法論についても簡単に紹介したい.

[1] 樋渡保秋, 礒部雅晴, 小特集“アルダー転移50周年”,日本物理学会誌, 62, 10 (2007).; 特集“分子シミュレーションの夜明け-Alder転移より半世紀-”,アンサンブル, 9, 4 (2007).
[2] Y. Hiwatari and M. Isobe (ed.), “Proceedings of Symposium on the 50th Anniversary of the Alder transition”, Prog. Theor. Phys. Suppl., 178 (2009).
[3] M. Isobe, Mol. Sim. 42, 1317 (2016).; Advances in the Computational Sciences, World Scientific, Chapter 6, pp.83-107 (2017).
[4] W. Krauth, Front. Phys. 9, 229 (2021).
[5] M. Klement and M. Engel, J. Chem. Phys., 150, 174108 (2019).

問合せ先:数物科学系 三浦 伸一