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能登半島北東部の温泉深層地下水の定期観測が深部流体の起源と令和6年能登半島地震に先立つ変動を明らかにした(2025.11.26)

2026年02月24日

 金沢大学理工研究域地球社会基盤学系の平松良浩教授、森下知晃教授は、富山大学学術研究部理学系の鹿児島渉悟助教、および高知大学海洋コア国際研究所の佐野有司所長、東京大学などからなる研究チームと共同で、能登半島北東部の温泉・深層地下水の定期観測を実施し、深部流体の起源と令和 6 年能登半島地震に先立つ変動を明らかにしました。

 本研究では、深部流体の起源と、群発地震に伴い能登半島北東部の地下で発生した現象の理解を目的として、当該地域の温泉における ³He/⁴He 比(※1)の時間変動を観測し、その結果を地震波トモグラフィ(※2)と組み合わせて分析しました。

 得られた成果からは、温泉や深層地下水における ³He/⁴He 比の定期観測と地震波トモグラフィを組み合わせた研究手法は、地下の構造の解析や、地震に関与する流体の起源・挙動の解明に役立つことが期待されます。

 本研究は平松良浩教授を研究代表者とした科学研究費助成事業(特別研究促進費)22K19949 および 23K17482、京都大学防災研究所共同研究 2023GC–07 の一環であり、平松良浩教授(地震学)と森下知晃教授(岩石学)は本研究の立案とサンプリング等に貢献しました。

 本研究成果は、2025 年 11 月 26 日に国際学術雑誌『Nature Communications』に掲載されました。

図:調査地点
丸印は本研究の調査地点を示し、定期観測を行ったサイト #1 ASY, #2 TKR は北東部に位置します。星印は2023年5月に発生したM6.5地震、2024年1日に発生したM7.6地震の震央を示します。破線の円で囲まれた領域は、震源集中域Clusters S, W, N, NE (Amezawa et al., 2023, Geophys. Res. Lett.; Nishimura et al., 2023, Sci. Rep.)を示します。黒線は活断層(井上・岡村 (2010) 地質調査総合センター; 尾崎 (2010) 地質調査総合センター)です。本図は「地理院地図(電子国土Web)」(国土地理院; https://maps.gsi.go.jp/development/ichiran.html)で出力したベースマップを修正して作成しました。

図:日本列島の地下構造の模式図
赤色で示される低速度域は柔らかく、物質が上昇可能と考えられます。

【用語解説】

※1: ³He/⁴He 比
 ヘリウムの安定同位体比をこのように表します。ヘリウムには質量数 3 と 4 の安定同位体が存在し、主に ³He は地球形成時に宇宙空間から固体地球内部に取り込まれた始原的な成分、⁴He はウランやトリウムの放射壊変で生成されたα粒子です。³He/⁴He 比はマントルでは高く、地殻では低いため、温泉・地下水中の ³He/⁴He 比を測定することによってヘリウムの起源を解析することができます。

※2: 地震波トモグラフィ
 地震波の到着時刻データを用いて、地下の地震波速度構造を推定する手法です。地震波速度は物質の密度などに応じて変動するため、地下の構造を調査する上で有用です。

 

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ジャーナル名:Nature Communications
研究者情報:平松 良浩
研究者情報:森下 知晃