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産業廃棄物から貴金属を選択的に回収する手法を開発(2020.10.05)

2021年01月12日

金沢大学理工研究域物質化学系の長谷川 浩 教授とナノ生命科学研究所の前田勝浩教授らの研究グループは、株式会社ダイセルとの共同研究を実施し、化学修飾されたセルロースを吸着剤として利用し、産業廃棄物の中から必要となる貴金属だけを選択して回収する画期的な手法を開発しました。

貴金属は、化合物などが作りにくいといった理由のために、その供給量が少ない貴重な金属ですが、その需要は、電子機器や医療機器での使用など、年々増加しています。不要になり捨てられた産業廃棄物の中から必要となる貴金属だけを回収し、リサイクルに回したり再利用したりできることが理想的ですが、現在標準的とされている手法では、複雑なプロセスを経なければならないことに加え、費用が高額で回収効率も高くありませんでした。

本研究では、酸性廃液の中から、銀とパラジウムだけを選択的に回収する手法を開発しました。この新しい手法では、化学修飾されたセルロースを利用して、廃液を直接通して銀やパラジウムを99%以上の効率で吸着させた後に焼却するというシンプルな方法で、高純度の銀やパラジウムを回収できます。

本研究で開発された手法は、これまでの回収技術と比べ、吸着材に捕集できる貴金属の最大吸着量が世界トップであり、他の化学成分が大量に存在しても影響を受けずに高いパフォーマンスを発揮するという特長があります。今後は、環境に優しいプロセスで貴金属を安定的にリサイクルすることをとおして、持続可能な社会の実現に寄与することが期待されます。

本研究成果は、2020年10月5日に国際学術誌『Chemical Engineering Journal』のオンライン版に掲載されました。