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世界最高強度の無孔性コンクリート耐衝撃性を解明防災構造物への適用に期待(2020.02.04)

2020年04月30日

金沢大学理工研究域地球社会基盤学系の栗橋 祐介 准教授と、室蘭工業大学および太平洋セメント株式会社の産学共同研究グループは、世界最高強度の無孔性コンクリート(※)の衝撃試験を実施し、その耐衝撃性を明らかにしました。

コンクリートは、世界中で広く使用されている建設材料です。その性能や強度を向上させることは、私たちの生活の質を豊かにすることにもつながるため、日々、改良へ向けたさまざまな実験や調査が行われています。コンクリートは、その組織の中に空隙を持つ多孔質の材料であり、その空隙の割合を可能な限り小さくした無孔性コンクリートは、最も強度が高いコンクリートとして知られています。しかし、無孔性コンクリートがどれほどの衝撃に耐えうるのか、その詳細な強度特性については分かっていませんでした。

本研究では、錘を落下させる落錘衝撃試験を実施し、その結果、無孔性コンクリートに高強度の鋼繊維を混入することで、その耐衝撃性が飛躍的に向上することが明らかになりました。また、無孔性コンクリートの圧縮・引張験結果に基づき、衝撃作用時の変形量の推定し、その精度を確認しました。

建設材料としてのコンクリートの品質の改善は、とりわけ地震や台風などの自然災害が多い日本のような国にとっては重要な課題です。本研究成果は、ビルや橋梁のみならず、斜面災害から人命や道路交通網を守る構造物など、より広範囲での無孔性コンクリートの使用の基盤となりうるものです。将来的には、日本の防災力の改善を含めた安全な社会インフラの構築につながることが期待されます。

本研究成果は、2020年2月4日(英国時間)に国際学術誌『International Journal of Civil Engineering』のオンライン版に掲載されました。

図1. 真空ポンプによる空隙除去と吸水処理

水で満たした密閉容器内に無孔性コンクリートを配置した後、真空ポンプを用いて組織内部の空隙除去と吸水処理を施す。

図2. 養生過程

吸水処理が完了した後、熱養生を実施する。

図3. 衝撃試験後の破壊の様子

高強度鋼繊維の混入量を増加させることで、無孔性コンクリートの耐衝撃性が飛躍的に向上する。この特性を生かすことにより、無孔性コンクリートの防災構造物への適用が可能になる。

【用語解説】

※ 無孔性コンクリート
世界最高強度を発現するコンクリート。最密充填状態となるように配合調整し、かつ真空ポンプによる空隙の排除と加熱養生により、鋼鉄と同等以上の圧縮強度の発現を可能にした。