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運動神経活動を活性化させるシートを開発!(2024.08.07)

2024年10月21日

 金沢大学理工研究域フロンティア工学系の西川裕一助教、小松﨑俊彦教授、茅原崇徳准教授、融合研究域融合科学系の田中志信特任教授、設計製造技術研究所の坂本二郎教授、トヨタ紡織の川野健二主査、永安秀隆主担当員、森香子係員、中京大学の渡邊航平教授、広島大学の前田慶明准教授、University of Maribor の Aleš Holobar 教授、Marquette University の Allison Hyngstrom 教授らの共同研究グループは、脳からの指令を筋肉へ伝える神経である運動神経を、座った状態で活性化させるシートの開発に成功しました。

 加齢は、私たちの身体の筋肉を萎縮させ、活動量の低下を引き起こすことが知られており、健康寿命を延伸させるためには対抗措置を確立する必要があります。一般的には、筋力増強トレーニングを行うことで筋力の維持・向上を図ることが推奨されていますが、高齢者には負担が大きく、持続性の観点から簡易的かつ受動的な方法で、「身体機能を活性化できる」手法の考案やデバイスの開発が重要です。

 本研究では、座った状態で転倒予防などに重要な大腿四頭筋(太ももを構成する筋肉の一つ)の神経活動を活性化できるシートを開発することを目的としました。大腿四頭筋は、加齢とともに筋萎縮が進行していく代表的な筋肉です。本研究チームは、共同して一定の周波数・振幅値の振動刺激機器で太もも裏側にある筋肉(大腿二頭筋)を刺激し、太もも表側(大腿四頭筋)の筋活動の活性化を図りました。その結果、大腿四頭筋ではなく、太ももの裏側の大腿二頭筋に対して振動刺激を付加することで、即時的に大腿四頭筋の筋活動を活性化でき、神経活動の変化量が大きいほど筋力が増加することを明らかにしました。

 これらの知見は将来、車いすの座面、自動車や航空機のシート、オフィスチェアなどに活用でき、さらにはフレイル予防の新しいツールとしても貢献することが期待されます。

 本研究成果は、2024 年 8 月 7 日 14 時(ロンドン時間)に学会誌『European Journal of Applied Physiology』のオンライン版に掲載されました。

図:(A)開発したシート、(B)着座したイメージ、(C)開発した振動子、(D)振動子を大腿二頭筋腱に当てた様子。

 本研究は、トヨタ紡織株式会社の共同研究経費の支援を受けて実施されました。

 

詳しくはこちら

European Journal of Applied Physiology

研究者情報:西川 裕一
研究者情報:小松﨑 俊彦
研究者情報:茅原 崇徳 

 

※本研究内容は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の英語サイト「サイエンス・ジャパン(Science Japan)」の Latest News(2024年9月25日公開)にpick up されました。