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イオン液体を一滴加えるだけでペロブスカイト太陽電池の高性能化と長寿命化に成功!(2021.04.16)

2021年04月28日

金沢大学ナノマテリアル研究所のシャヒドウザマンモハマド助教、當摩 哲也 教授の研究グループは、ペロブスカイト太陽電池の高性能化と長寿命化に成功しました。

今回の基盤となる技術は、ペロブスカイトを塗布で製膜する前に、イオン液体をペロブスカイト前駆体溶液に少量添加するだけで膜が数十ナノメートルサイズのナノ粒子膜化する技術です。この技術は、6年前に本研究グループが開発しました。今回はこの技術を、高性能なトリプルカチオン型ペロブスカイト太陽電池作製に応用しました。最初に、イオン液体添加によりナノ粒子膜化したペロブスカイト膜を作製し、その上にトリプルカチオン型ペロブスカイトを製膜することで、ナノ粒子を成長核としてトリプルカチオン型ペロブスカイトが欠陥の少ない高品質な膜に成長することを見出しました。この高品質化により太陽電池性能が向上しました。また、長時間使用では、この技術で製膜した膜の欠陥が少ないため、劣化の原因となる大気中の水などの膜に入りこみを抑えることができ、太陽電池の長寿命化に成功しました。従来の手法で作製したペロブスカイト太陽電池は2500時間で発電しなくなりましたが、本研究のイオン液体を添加したペロブスカイト太陽電池は6000時間を超えても初期性能の8割を保持し続けることがわかりました。

ペロブスカイト太陽電池は、材料が安く、塗布で製膜できるため製造コストも低い夢の太陽電池です。これらの知見は将来、太陽電池のさらなる普及に活用されることが期待されます。

本研究成果は、2021年4月に米国化学会誌『ACS Applied Materials & Interfaces』に掲載される予定です。

図1: 本研究で作製したペロブスカイト太陽電池の写真
図2: イオン液体を一滴加えるだけでペロブスカイトナノ粒子薄膜が得られる技術を開発
図3: 本研究の太陽電池の構造とイオン液体を添加して高品質化したトリプルカチオン型ペロブスカイト膜の表面電子顕微鏡写真

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