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ニュートリノ微小質量を説明するための理論的モデル構築に向けて(2020.06.17)

2020年11月16日

金沢大学理工研究域数物科学系の青木 真由美 准教授らの研究グループは、ニュートリノの微小質量に寄与する荷電レプトン数非保存相互作用(※)が加速器実験で測定可能であることを明らかにしました。

ニュートリノは、物質を構成する最も根源的な要素である素粒子の一種です。長い間、質量を持たないのではないかと考えられてきましたが、20世紀末に岐阜県にあるニュートリノ観測装置のスーパーカミオカンデにおける観測などによって、質量を持つことが確認されました。ニュートリノの質量は非常に小さいため、他の素粒子とは異なるプロセスで質量を獲得していると予想されていますが、それがどのようなプロセスであるのかはいまだ解明されていません。

本研究では、荷電レプトン数非保存相互作用がシーソー機構と呼ばれるメカニズムを通してニュートリノの質量に寄与することに注目し、さまざまな実験により、その相互作用の検証が可能であるかどうかを調べました。その結果、荷電レプトン数非保存相互作用が加速器実験で測定できることを明らかにしました。

荷電レプトン数非保存相互作用は現在のところ見つかっておらず、発見された場合にはニュートリノの質量起源だけではなく、素粒子物理学の基礎理論の解明にも大きく役立つことが期待できます。

本研究成果は、2020年6月17日に国際学術誌『Physical Review D』のオンライン版に掲載されました。

【用語解説】

※ 荷電レプトン数非保存相互作用
物質を構成する基本粒子の一つのグループであるレプトンのうち、電荷を持つものを「荷電レプトン」と呼ぶ。電子は荷電レプトンの一つである。荷電レプトンには、対応する反粒子である反荷電レプトンが存在し、素粒子の相互作用の前後で、荷電レプトンの総数から反荷電レプトンの総数を引いた数が変化するものが、荷電レプトン数非保存相互作用である。