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能登半島、富来鉱山の金鉱脈の形成過程を解明(2022.08.17)

2022年08月17日

 金沢大学理工研究域地球社会基盤学系の濵田麻希助教、平松良浩教授、環日本海域環境研究センターの長谷部徳子教授、北陸電力株式会社の共同研究グループは、志賀町の協力のもと、能登半島にある富来鉱山の金鉱脈が約1760万年前の日本海拡大に伴って形成したことを解明しました。

 富来鉱山の旧生神鉱区東郷三番坑内の石英脈中から、金と銀を含むエレクトラム(※1)金を含むウィッテンボガード鉱、フィシェサー鉱、銀を含む硫化銀-セレン化銀固溶体鉱物が見つかったため、これらが金や銀の鉱石として採取されていたと考えられます。そのほかに、セレンに富むピアース鉱、卑金属を含む黄鉄鉱、黄銅鉱、閃亜鉛鉱、錫石、自然ビスマス、黄銅、自然銅の産出も確認しました(図1)。セレンに富むピアース鉱の報告は世界で2例目であり、国内では初めて見つかった鉱物です。

 また、年代測定の結果から富来鉱山の金鉱脈はおよそ1768±41万年前であること、鉱床周辺の安山岩の年代も1752±43万年前であることから、1350-2100万年前の日本海の拡大時期に金鉱脈が形成したと考えられます。この時代に形成した他の断層と同じく、北東-南西走向の富来川南岸断層が富来鉱山鉱区の北部に存在するため、以下のような形成プロセスが考えられます。①約1760万年前に日本海拡大に伴って火山活動が活発化し、安山岩が噴出、②同時期に富来川南岸断層の元になる断層の活動により、安山岩中に割れ目が形成、③地下から金などの元素を多く含む熱水が割れ目を通って上昇し、④エレクトラムなどの資源鉱物が晶出・濃集することで富来鉱山が形成した、と考えられます。

 本研究の結果は、日本列島形成時代以降、日本海側の鉱山や能登半島で起きた地質イベントの詳細を明らかにする上で重要な知見となるものです。

 本研究成果は、2022年6月14日に資源地質学会誌『Resource Geology』のオンライン版に掲載されました。

図1.富来鉱山で産出する資源鉱物と脈石鉱物

(a) 石英脈中で共生する他形の黄鉄鉱と黄銅鉱、(b) ウィッテンボガード鉱、フィシェサー鉱、Ag2S-Ag2Se固溶体鉱物と共生するエレクトラム、(c) 閃亜鉛鉱、水酸化鉄鉱物の近くに産するAg2S-Ag2Se固溶体鉱物の小粒子の集合体、(d) 黄鉄鉱中に包有されるAg2S-Ag2Se固溶体鉱物、(e) 石英の自形面上に成長する他形の氷長石。

Py:黄鉄鉱、Cpy:黄銅鉱、Qtz:石英、Adl:氷長石、El:エレクトラム、Uyt:ウィッテンボガード鉱、Fis:フィシェサー鉱、Sph:閃亜鉛鉱、Ag2S-Ag2Se:Ag2S-Ag2Se固溶体鉱物

 本研究は、平成29年度受託研究(志賀町)および、平成30年度 女性研究者等研究支援制度 研究ネットワーク構築部門の支援を受けて実施されました。

用語解説

※1 エレクトラム
 金と銀との合金であり、金や銀を産する鉱床で典型的にみられる資源鉱物。熱水性鉱脈の主に石英脈中にほぼ単独、あるいは他の鉱物に伴って産出する。

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