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運動神経の活動特性に性差があることを発見!(2024.02.16)

2024年03月01日

 金沢大学理工研究域フロンティア工学系の西川裕一助教、中京大学の渡邊航平教授、マリボル大学(スロベニア)のAles Holobar教授、広島大学の前田慶明准教授、マーケット大学(アメリカ)のAllison Hyngstrom教授らの共同研究グループは、運動神経の活動特性に性差があることを明らかにしました。

 運動神経とは、脳からの運動に関する指令を筋肉まで伝える神経線維のことです。ヒトが運動を理解する上で、運動神経の活動特性を理解することは重要です。しかしながら運動生理学領域において、性差に注目して比較検討をした研究は全体の12.5%程度と非常に少なく、運動神経活動の性差も未解明な点が多いのが現状でした。筋組織量や筋血流量といった筋肉に着目した多数報告されていますが、一方で運動神経活動に関しては報告が少なく、性差に関する情報が不足していました。

 我々の研究グループは、運動神経活動を非侵襲的に計測可能な高密度表面筋電図法(※1)を用いて、運動神経の活動を数値化し、性差や非対称(利き手と非利き手の活動の違い)について解析しました。

 その結果、女性は男性と比較して運動神経活動が過剰であることを確認しました。さらに男性は、利き手と比較して非利き手において運動神経活動が過剰である一方で、女性は利き手と非利き手の運動神経活動には差がないことを明らかにしました。

 これらの知見は将来、性別に応じた運動方法への応用、病気やケガの発症頻度などの解明へ応用されることが期待されます。

 本研究成果は、2024年2月16日22時(ロンドン時間)に『European Journal of Applied Physiology』に掲載されました。

図:運動神経活動の性差
最大筋力の10%~60%のすべての運動課題において女性が有意に高い活動を呈していた。* p < 0.05

 本研究は、Slovenian Research Agency (project J2-1731,Program funding P2-0041)の支援を受けて実施されました。

【用語解説】

※1 高密度表面筋電図法
60〜100 個程度の表面電極を用いて、広範囲に筋活動を計測する手法です。筋肉が動く際には、脳からの電気信号が運動神経を介して筋肉に伝わります。この時、電気信号は筋線維の上を伝播していきます。高密度表面筋電図法では、広範囲の筋活動を計測することができるため、電気信号の伝播パターンを解析することで、神経と筋肉のつなぎ目(神経筋接合部)を見つけることができます。また、電気信号の波形解析をすることで、運動神経が活動するタイミングを同定することができます。

詳しくはこちら

European Journal of Applied Physiology

研究者情報:西川 裕一