海洋マントルにおける小スケール対流の証拠検出―南太平洋アイツタキ島マントル捕獲岩からのアプローチ―(2024.07.05)
2024年07月08日
金沢大学理工研究域地球社会基盤学系の森下知晃教授、田村明弘研究員、荒井章二名誉教授らは、東京大学大気海洋研究所の秋澤紀克助教、京都大学などの研究グループと共同で、南太平洋アイツタキ島のマントル捕獲岩(※1)を用いて、海洋域のマントル(※2)で小スケール対流(※3)が発生していることを明らかにしました。
小スケール対流とは、数値的・解析的な研究によって報告されている理論的な対流様式の一つで、地球の冷却史を正確に推定する上で重要だと考えられています。しかし、物質的な存否の実証は難しくこれまで報告されていませんでした。本研究における詳細な解析から、細粒分解物が初めてザクロ石(※4)であることを証明しました。このことにより、海洋マントルの小スケール対流の存在を世界で初めて実証することに成功しました。この研究成果から、小スケール対流の開始時期が推定できるようになるため、今後地球の冷却モデルの高精度化への貢献が期待されます。
森下知晃教授は、海底掘削科学や岩石学などを専門とし、本研究においては特に、解析に用いた試料の提供や化学分析において貢献しました。
本研究成果は、2024年7月5日(日本時間)に国際学術誌『Progress in Earth and Planetary Science (PEPS)』に掲載されました。
海洋マントルにおける小スケール対流モデル図
用語解説
※1 マントル捕獲岩
地球深部マントル(※2)は、カケラとしてマグマに取り込まれて地球表面に運ばれます。それを、マントル捕獲岩と呼びます。
※2 マントル
我々が住んでいる地球表面の地殻の下には、マントルが存在します。マントルの下には金属で形成される核が存在しており、地球は成層構造をしています。
※3 小スケール対流
海洋プレートができる海嶺からある距離離れた海洋プレートの直下では、数100 kmスケールでマントルが対流していると考えられています。これは、地球表層から冷却が進む一方で、リソスフェアが一方向に動くことにより引き起こされる対流様式であり、数値的・解析的な研究により初めて報告されました。
※4 ザクロ石
マントル物質の中で赤色を示し、アルミニウムやカルシウム、マグネシウム、鉄、ケイ素などを主に含む鉱物です。ガーネットと呼ばれる宝石として親しまれています。
Progress in Earth and Planetary Science (PEPS)
- 研究者情報:森下 知晃