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令和3年度JST共創の場形成支援プログラム 共創分野本格型に採択される!(2021.10.29)

2021年10月29日

「令和3年度JST共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)共創分野本格型(プロジェクト期間10年)」に、金沢大学が提案していたプロジェクト「再生可能多糖類植物由来プラスチックによる資源循環社会共創拠点」が採択されました。本格型への応募件数は18件、採択件数は2件で、金沢大学はそのうちの1件です。また、育成型(2年間)への応募件数は32件で、採択件数は5件でした(図1)。
JST HP) 

 本プログラムは、大学などを中心として、企業や地方自治体・市民などの多様なステークホルダー(※1)を巻き込んだ産学官共創により、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に基づく未来のありたい社会像を拠点ビジョンとして掲げ、その実現のため具体的かつ到達可能な駆動目標(ターゲット)を設定し、この達成に向けた研究開発と産学官共創システムの構築を一体的に推進します。これにより、知識集約型社会をけん引する大学などの強みを活かし、ウィズ/ポストコロナ時代の未来のありたい社会像実現を目指す、自立的・持続的な産学官共創拠点を形成します。

審査においては

  1. 多様性のあるメンバーでの徹底的な議論により拠点ビジョンが作られているか
  2. 社会課題解決に向けて、どのようなアプローチをとるのか
  3. 拠点の長であるプロジェクトリーダーには、拠点ビジョンの実現という最終ゴールを達成するために、従来の大学や公的な研究機関の伝統的なプロジェクトの進め方を打破するリーダーシップとチームワークはあるか

が、大切な評価指標となりました。

図1 令和3年度JST共創の場形成支援プログラムに採択された拠点。 赤色は「本格型(10年)」、オレンジ色は「育成型(2年)」。

金沢大学の拠点では、以下の提案を行いました(図2)。
本拠点では多糖類農業廃棄物(※2)を資源として捉え、プラスチックごみを生み出さないバイオプラスチック製品を用途に合わせてリデザインします。適切な量だけ生産し、使用後に回収して再生することで無駄なく使い続ける、バイオプラスチック循環プラットフォームを構築します。そのプラットフォームが、様々な世界地域へ、樹木の年輪のように拡大成長し、大量生産、大量廃棄による暗黒の未来を防ぎます。

図2 拠点全体のイメージ

本プラットフォームの運用のため、多糖類農作物を持続的に生産可能な技術を社会実装(※3)し、プラスチック生産、消費、リサイクルに関するサプライチェーンを構築し、絶対的デカップリング(※4)を達成します。このような社会システム転換の実現のため、インパクトファイナンス(※5)を実践する金融機関が協力します。

拠点の循環型プラスチック製品の社会実装により、企業と使用者の価値観が変わるイノベーションサイクルを回して、様々な問題解決につながるモデルを示します。

これら5つのサイクルを、まるで協奏(共創)曲のように奏でることで、ポストコロナ社会を見据えた資源循環共創社会と「価値観のイノベーション」を実現し、人々を幸せにするSDGs目標達成に、スピード感を持って貢献します。

より具体的には、化石資源に依存せず廃棄物の発生を抑制した新たなバイオリファイナリー(※6)生産技術の確立を目指します。植物由来プラスチックの開発に伴う、食料との競合や環境汚染・労働条件悪化といった現在の諸課題を解決するため、持続可能な植物資源を効率的に生産する技術を確立するとともに、廃棄物の大幅な削減を可能とする技術基盤の整備や、海洋汚染の防止を実現する製品の開発を行います(図3)。

図3 拠点が目指す10〜20年後のバイオマスプラスチック資源循環社会

【用語解説】

※1 ステークホルダー
企業が経営をするうえで、直接的または間接的に影響を受ける利害関係者。

※2 多糖類農業廃棄物
セルロースや澱粉などを含む農業廃棄物。

※3 社会実装
研究成果を、実際に社会で使われるものにするための活動。

※4 絶対的デカップリング
資源の循環利用やエネルギー多消費の産業構造の改革などによって、経済成長と環境負荷への影響を切り離し、経済成長を維持しつつ環境負荷例えば二酸化炭素の絶対的な排出量を削減すること。

※5 インパクトファイナンス
適切なリスク・リターンを追求しながら、明確な意図を持って環境・社会・経済にポジティブなインパクトをもたらそうとする投融資。

※6 バイオリファイナリー
再生可能資源であるバイオマスを原料にバイオ燃料や樹脂などを製造する技術。

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