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分子構造により細孔径を制御したカーボンを開発!(2021.05.21)

2021年06月03日

金沢大学ナノ生命科学研究所の生越 友樹 特任教授/京都大学大学院工学研究科教授、理工研究域物質化学系の山岸 忠明 教授、角田 貴洋 助教/ナノ生命科学研究所助教、大学院自然科学研究科物質化学専攻修士課程2年(研究当時)の坂爪 佑真 大学院生は、東北大学および岡山大学との共同研究において、焼成のみで分子レベルで細孔径が制御された多孔性カーボンを開発しました。これまで多孔性カーボンは、カーボン骨格をガスや薬品により破壊して細孔を形成する賦活法で主に合成されてきました。しかし賦活法では、材料調製時のカーボン骨格の構造変化が激しく元のカーボン骨格が残らない、分子レベルでの細孔制御は困難、再現性良く多孔性カーボンを得るには職人芸的に高度な技術が必要、といった問題点があります。

本研究では、炭素源の有機分子を合理的に設計し、焼成のみで細孔径が分子レベルで制御された多孔性カーボンを得ることに成功しました。この手法では、高カーボン化効率のため元の構造を保ったカーボンが再現性良く得られることに加え、分子設計により分子レベルでの細孔径制御が可能です。得られた多孔質カーボンは、細孔径に適した金属イオンが導入でき、ナトリウムイオン電池として機能することを確認しました。将来的には、特定のサイズの基質のみが反応する触媒への応用が期待されます。

本成果は、2021年5月21日に英国Nature Researchの国際学術誌である『Communications Chemistry』にオンライン掲載されました。

図1: 設計した有機分子を焼成することで分子サイズに対応した細孔径を有する多孔性カーボンが得られる。
図2: カーボン1はナトリウムイオンのサイズに適した細孔を有しているためグラファイトに比べて2倍以上の容量を示す。

分子構造により細孔径を制御したカーボン