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理学談話会(物理)開催のご案内

終了
開催期間
2017/12/14
2017年12月14日

日 時: 2017 年12 月14 日(木) 16:30~18:00

場 所: 金沢大学 自然科学5号館 2階 大講義室

講 師: 川井茂樹先生

 (物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点主幹研究員)

講演題目: 原子間力顕微鏡を用いた表面上の分子測定
講演概要

 分子の構造を決定するために様々な測定が開発されてきた。しかし,従来の方法では,単分子の構造を直接的に同定することは困難であった。2009年に原子間力顕微鏡の探針先端を一酸化炭素分子などで終端させることで,分子の内部骨格が観察できることをGrossらによって示された[1]。これにより,単分子の研究が直接的に行えるようになった。この超高分解能な観察技術は固体表面上で行う化学にとって非常に有用である。我々は,単分子や[2]自己組織化膜の構造を解明し[3,4],その凝集メカニズムの解明を行った。また,表面での反応で合成した化合物の構造評価[5]を行うことで,加熱温度による生成物の選択ができることを示した。さらに,新たに設計した前駆体分子を表面で化学反応させることで,ホウ素原子を規則的にリボン状のグラフェン(GNR)にドープできることを示した[6]。一方,何もドープをしていないGNRを金の表面上で探針を用いて操作することで,その界面で発生する超潤滑現象のメカニズムを解明した[7]。このような比較的平坦な芳香族分子ではなく,三次元の芳香族分子を用いることで,探針の一酸化炭素と分子の外殻にある水素原子との間に発生する分子間力を直接的に測定することに成功した[8]。このように,探針先端を制御した原子間力顕微鏡は,表面上の化学の分野で重要な測定手法である。

[1] L. Gross, et al., Science *325*, 1110 (2009).

[2] S. Kawai, et al., ACS Nano *11*, 8122 (2017).

[3] S. Kawai, et al., ACS Nano *7*, 9098 (2013).

[4] S. Kawai, et al., ACS Nano *9*, 2574 (2015).

[5] S. Kawai, et al., Nature Commun. *7*, 12711 (2016).

[6] S. Kawai, et al., Nature Commun. *6*, 8098 (2015).

[7] S. Kawai, et al., Science *351*, 957 (2016).

[8] S. Kawai, et al., Science Advances *3*, e1603258 (2017).

  世話人: 米徳大輔(金沢大学理工研究域数物科学系)

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